先日(9/29)医王山(イオウゼン)射撃場に行ってきました、目的は知人のS410(5.5mm)の定期メンテナンスが終了したので 性能確認のため 弾速測定を依頼されたのと 私のS510(5.5mm)での射撃練習です。
この季節から医王山射撃場はエアーライフルハンターで混みます、エアーライフルは気温が低下すると弾速が低下するので 『できるだけ猟期に近い気温でスコープ調整しておきたい』 というハンターが多いからです。
この日も2つの射座に3人でお互い譲り合って弾速測定と射撃練習をしました。
今回は『スコープ調整&弾速測定した時の気象条件【温度・気圧・湿度】から 実猟時の気象条件での弾速を推測する方法』の備忘録を兼ねた紹介です。
これを理解しておくと実猟時の命中精度向上に非常に役に立ちます。尚 計算に当っては√(平方根)付きの電卓が必要です(パソコンかスマホにEXCELのソフトがあれば電卓は不要)。
弾速と気象条件の関係
弾速はペレットが同じでエアーライフルの出力が同じなら『空気の密度』に大きく依存します(他にも影響する因子は有りますがあくまで近似)。
空気の密度が高いと弾速は下がり、密度が低いと弾速は上がります、空気の密度は気温、気圧、湿度によって変わります、
他の条件が一定なら
・気温が下がる→空気の密度が上がる⇒弾速は下がる↘
・気圧が下がる→空気の密度が下がる⇒弾速は上がる↗
・湿度が下がる→空気の密度が下がる⇒弾速は上がる↗
実際の現場では 気温、気圧、湿度が複雑に絡んで 弾速が変化します。
どうやって空気密度を計算するのか?
空気密度の計算式は公開されています、EXCELのソフトが入っている パソコンやスマホを持っていれば 比較的簡単に出来ますが もっと簡単に計算できる無料のサイトを見つけました。
高精度計算サイト
これに温度(℃)、湿度(%)、気圧(hPa) を入力し計算ボタンを押せば 空気密度(kg/m^3)が計算できます。
ちなみに私が従来使っていた計算式(湿度は考慮しない式)と上記の計算結果の誤差を検証してみたところ 平均0.5%(0.2~1.1%)差異が有りました。
弾速と空気密度の関係式
ペレット(の空気抵抗)が同じという条件で
弾速と空気密度の関係式は 下記です。(仮にXとしています)
弾速:X=√(1/空気密度)
弾速は『X=1/空気密度の平方根』に比例します。 この値が大きければ弾速は高くなります。
①空気密度を前項の方法で計算し ②1/空気密度を計算し ③それを√(平方根)すれば このX値は計算できます。
EXCELの場合の計算式は 『X=SQRT(1/空気密度)』
気象条件と弾速の変化割合
下表にあるように いろいろな条件で上記のX値を計算し 各条件での その割合を計算してみました。
前提条件:気温の変化により空気銃のエアーチューブ(タンク)内のエアー圧力も変わりますが、同じ圧力で射撃した場合 として
No1は10月時点の当地(石川県)の平均的な気象条件で計算 この点を基準としてNo2~No4の割合を計算⇒割合①参照、 No2はNo1条件で標高500mの場合、 No3 No4はNo2条件で低温の場合、
これから分かることは標高500mでは空気の密度が下がり弾速は2%上がるが 低温になると弾速は下がり5℃の場合 平地より弾速が0.9%下がる ことが分かります。
No5~No10は 一般的な気象条件で 気温だけが変化した場合を計算、
15℃を基準とした場合⇒割合②参照、
30℃を基準とした場合⇒割合③参照。
15℃と猟期の5℃(当地の場合)では 弾速は1.8%の低下ですが、
真夏の30℃と5℃では4.6%も低下することが 分かります。
次に 私の銃「エアアームズS510_5.5mm』を使って実際に弾速を測定し計算した結果が下表です
尚 私は ペレットがJSB EXACT JUMBO 15.9grain(=FX PREMIUM 16grain) の場合 猟期は940fps(=287mps)で弾道計算(POIを)しています。
2019年4月27日の医王山ライフル射撃場はほんと寒かった 5℃で弾速測定したのは初めてでした。
この日 実測弾速値が939fps 猟期で弾道計算に使っている弾速とほぼ同じ値なのを確認できました。
この測定結果は気温が16.1℃低下で 弾速が理論値2.5%下がる に対し 2.3%下がっていました、ほぼ理論値通りですが これはたまたまと思います。
弾速を測定する際 通常 温度計しか持って行っていません、気圧計、湿度計も持参したデータは少ないです。
尚 弾速変化は下記誤差・バラツキの影響を受けます、あくまで近似計算です。
・ペレットのバラツキ
・銃のバレルの状態
・銃に充填しているエアー圧のバラツキ
・圧力計(銃・ポンプ・タンク)の誤差(特に銃の圧力計は参考程度と思って下さい)
・風の影響
・空気密度のバラツキ
・空気密度以外の要因の影響
・空気密度計算式の誤差
・弾速計と銃の位置関係のバラツキ(2つの光センサー式の場合 ペレットが2つのセンサーに対し平行に通過しているか、マズルからセンサーまでの距離)
・弾速計の精度(センサーや電子回路の温度特性も)
・温度計・湿度計・気圧計の誤差 (時計店で比較してみれば分かりますが、デジタルだから気温、湿度が正確とは言えません)
弾速が違うとどうなるか?
「弾速の低下」による「POI : Point Of Impact :ペレットの到達点でのゼロイン点からの(上下方向)ズレ量」が実際にどの位なのか 推測してみました。
960fpsで50mゼロイン スコープ調整し、弾道計算ソフト(chairgun等)でPOI(上下方向のズレ量)を計算:
実猟時 960fpsでのPOIで狙ったが 弾速が940fps【2%ダウン】した場合 下記の値(推測値) 下方にズレます。
・50mで10.6mm
・75mで27.5mm
・100mで48.4mm
イメージ図
「50mでΦ25mmに5発にまとまる銃」なら50mで10mm程度のズレは誤差の範囲と思います(へたな私の場合)。
75mならなんとか中たるかな、 100mだったら厳しい。
100m前後を主に狙うなら100mでゼロインするのがベストです(関東の射撃場は100m撃てますね)。
しかし 命中精度を上げるには 実猟時の弾速で弾道計算(chairgun等)してPOI(上下方向のズレ量)を計算しておくべきです。
この場合でもスコープ調整した時から弾速が低下しているのでゼロインでのPOIはズレていますが、上記の例より少ないので 実猟での調整は少なくなります(遠射の場合)。
【あくまで近似計算なので 実猟時の調整は必要です、但し出来るだけ調整が少ない方法を選定すべき】
まとめ
気象条件 気温・気圧・湿度(特に気温の影響大)によって 弾速が変化します、特に 猟期は冬で低温なので 秋に比べ 弾速は低下します。
また 弾速計が無くともスコープ調整した時の気温と実猟の時の気温は測定すべき です、弾速はいろいろなサイトで公開されていますが それが何度で測定されたデータかは注意すべきです。
上記の方法で 実猟時の気温の弾速に置き換えて弾道計算ソフトでPOI(ズレ量)を計算しておくことが重要です。
尚 参考ですが 猟場付近(主要都市ですが)の気象条件は気象庁のホームページで分かります。
繰り返しになりますが
まとめると より命中精度を向上 するには
・猟期の気象条件での弾速(上記の方法で推測)で弾道計算しPOI(上下方向のズレ量)を計算
・ゼロインする距離は実猟で狙う距離に近い距離が良い(100m前後を狙うには100mでゼロイン)
・実猟での多少の調整 『狙うポイント、スコープのエレベーションダイアル』 は必須
(銃に充填しているエアー圧力の確認も必要)
なにより『射撃の腕が良い』ことが一番重要です。11月15日まであと何回射撃練習できるかな!?
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